小学生中心の英語ビギナーのイントロダクトリーコースでは、たくさんの「マザーグース」を歌います。
「マザーグース」はイギリスやアメリカで語り継がれ、歌い継がれてきた詩や童謡の総称で、「メリーさんのひつじ」や「ロンドン橋」は日本人にもお馴染みですが、日本ではあまり知られていないものや、メロディーだけ採用され、オリジナルとはぜんぜん違う日本語の歌詞がつけられているものなどもあります。
私と英語のマザーグースの出会いは小学5年生のときです。
イギリスのシェフィールド大学からの留学生が私の家に3か月間ホームスティしていたことがありました。そのとき、留学生のお姉さんが本とカセットテープをプレゼントしてくれ、いくつかのマザーグースを教えてくれました。
マザーグースは、英米では誰もがあたり前のように幼少期に親しむものなので、映画や物語、新聞記事にも引用されることがあります。
つまり、引用であることに気づかずにいると、内容の正しい理解にはたどり着けないことになってしまいます。
たとえば、物語「鏡の国のアリス」に登場するハンプティダンプティというキャラクター… 詩中の”all the king’s men”は「覆水盆に返らず」を示唆するので、アメリカでは新聞の見出しに”All the President’s Men ”(ニクソン政権はもとに戻らず)”と引用されたことがあります。
映画「ダイハード3」でも”Simple Simon”という呼び名は、歌”Simple Simon”のキャラクターの印象を受けて「まぬけな奴」という代名詞として使われています。
また、トランプ元大統領が前のアメリカ大統領選で現バイデン大統領に”Sleepy Joe”というニックネームをつけ揶揄していたことは記憶の新しいところですが、”Are You Sleeping”の歌詞に出てくる”Brother John”のイメージと関係しているのではないかと私は推測しています。
このように英米社会に深く根付いた「マザーグース」を知っておくことは、英米文化の教養を知ることでもあります。
歌を通して、英米のライフスタイルや価値観に触れたり、英語でよく使われる韻を踏む言い回しを耳にできる良さもあります。
時間にまだ余裕のある小学生の時期だからこそ、ぜひマザーグースに触れてもらいたいと思っています。
(写真はニュージーランドの公園で見つけたハンプティダンプティ)